にゃんとま~の放浪記

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★水野和夫『「アベノミクス」の課題 過剰資本を制御せよ』|毎日新聞2月4日

(引用始め)(色付け、、などは引用者による。また(引用者)とある場合も同じ)

水野和夫『「アベノミクス」の課題 過剰資本を制御せよ』|毎日新聞2月4日

 アベノミクスはデフレ脱却の切り札となるのか?
 
 アベノミクスへの「期待」で円安・株高が進んでいる。円は1㌦=91円台前半まで売られ、2010年6月以来の円安水準となった。日経平均株価は1万1000円台乗せで、10年4月以来2年9カ月ぶりの高値更新。昨年11月中旬以降、マーケットは様変わりである。こうした反応は、実体経済を反映したものではない。12年12月の鉱工業生産は前月比2・5%増となったが、市場予想(4・0%)や1カ月前の事前予測(6・7%)を下回ったのである。
 
 もちろん、マーケットの期待はせっかちであり、実体経済がそれに迅速に追随するのは無理である。アベノミクスは期待を高めた点では評価できるものの、問題はその中身に相反する政策がミックスされていることにある。その結果、期待に現実が追いつかない可能性がある。アベノミクスは大胆な量的緩和、積極財政、そして成長戦略からなる(3本の矢)。マネタリストが主張する量的緩和と、規制緩和を重視した成長戦略は、いわゆる「小さな政府」思想に基づいている。一方、積極財政やターゲッティングポリシー志向の成長戦略は「大きな政府」を前提とする。「小さな政府」は1970年代半ばに、それまで経済学の主流だった「大きな政府」を否定して主役の座を奪った。その後、「大きな政府」論と「小さな政府」論が経済学的に整合性をとって統合された理論となったわけではなく、あくまで政治の妥協の産物である。
 
 「小さな政府」は本来、71年のニクソンショック以降、市場経済化のなかで台頭し、90年代になると、グローバリゼーションの進展で金融市場の肥大化をもたらした。その自壊が2008年のリーマンショックだったように、金融のグローバリゼーションはバブル生成と崩壊を繰り返す実体経済で「成長」できなくなったからバブルが起きるのであって、バブル崩壊で生じたデフレを「成長戦略」などでは克服できない
 
 量的緩和政策はバブルをもたらし、公共投資を増やす積極財政政策は過剰設備を維持するために固定資本減耗を一層膨らますことになる。付加価値(名目国内総生産=GDP)の一部を構成する固定資本減耗は資本設備の価値を維持するための維持・補修費である。量的緩和のあとバブルが崩壊すると急激な賃金引下げを招く。積極財政のあと景気回復すると資本減耗と営業余剰を合わせた増加額が、付加価値の増加を上回ってしまい、残差の扱いを受ける賃金が抑制されることになる。02年から戦後最長の景気回復、リーマンショック後の09年からの景気回復、いずれも1人当たり賃金は下落し、成長しているのは資本なのである。
 
 規制緩和による成長戦略はバブル生成や非正規社員の増加につながるし、ターゲッティングポリシーは近代社会以降のあり方をある程度想定しないと成功しない。そうしないままターゲッティングポリシーを行えば、得られる成果以上にリスクが顕在化する。「より速く、より遠くへ」を旨とする近代社会において燃費を大幅に改善した最新鋭旅客機の事故が相次いで、運行停止を迫られている。北アフリカに安価なエネルギーを求めてより遠くへ行けば、国際テロリストが待ち受けている。
 
 中世から近代への移行期である「長い16世紀」(1450~1650年)においてプロテスタントがカトリックに勝利したのは「海賊資本主義」(カール・シュミット)と「出版資本主義」(ベネディクト・アンダーソン)を味方につけたからである。現在、それに匹敵するのが「山賊資本主義」と「インターネット資本主義」である。前者は「海の時代」から「陸の時代」へとパワーシフトの真っ只中にあることを象徴し、後者は物理的に遠くへいかなくてもいい社会が実現する可能性を示唆している。
 
 近代化した先進国は過剰資本となっている。過剰に行き着くのは、資本主義の始まりにその原因がある。本来キリスト教社会で禁止されていた利子を12~13世紀になって「不当な利子」を禁止することにより。事実上容認したのである(ル・ゴッフ)。神の所有物だった時間に値段をつけるのはあくまで「正当な利子」のみだったはずである。ところが、貨幣経済が広がると、しぶしぶ「教会は、西欧では33%が貨幣の≪正当な価格≫の認可ぎりぎりの線だと認めた」(『所有の歴史 本義にも転義にも』ジャック・アタリ著、山内昶訳・法政大学出版局)のだった。
 
 もともと市場金利(12~13世紀は10%程度)とはるかにかけ離れた33%以上の金利を不当とした習性は、現在まで続いているので、資本が過剰に蓄積されていく。将来あるべき資本主義は、過剰な資本蓄積を制御する仕組みの導入だ。株式市場で導入されている高速・高頻度取引(FHT、注文処理速度が1000分の1秒単位)などは資本の過剰蓄積を推奨することになり、時代の方向性とは正反対である。過剰資本を制御した上で、極力物理的に移動をしないために、いかにインターネットを利用するかであり、かつ移動に関わるエネルギーは、極力国産化することである。(みずの・かずお=埼玉大客員教授)

(引用終)

(引用者)※著者の略歴:1953年生まれ。三菱UFJ証券参与・チーフエコノミスト。1977年、早稲田大学政治経済学部卒業。1980年、同大学大学院経済学研究科修士課程修了。八千代証券(国際証券、三菱証券を経て、現・三菱UFJ証券)に入社。1998年、金融市場調査部長。2000年、執行役員。2002年、理事・チーフエコノミスト。2005年より現職

 もうすこし判り易い記事としては⇒ 1月31日WEBRONZA+ http://bit.ly/WsgZKL がある。

 本論はそれよりもやや抑制的な言い回しになっているので、判り辛く感じる向きもあるかと思うが、キチンとしたアベノミクス批判になっている。色付けした箇所を吟味してもらいたい。

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  1. 2013/02/09(土) 16:05:19|
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