にゃんとま~の放浪記

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【超重要】『乱流 総選挙 反TPPの核心 インタビュー オピニオン 京都大学教授 佐伯啓思さん』|朝日新聞1日

―以下は、12月1日付の朝日新聞17面に載った『反TPPの核心』という記事である。朝日新聞の原真人編集委員が佐伯啓思京都大学教授に「論争を挑んだ」とされている。

―紙面を手に取ると、朝日新聞の巧妙な意図が隠されているのに気付く。そのことを指摘したいので、全文を引用する。

(引用始め)(色付け、【超重要】【重要】、などは引用者による。また(引用者)とある場合も同じ)

【超重要】『乱流 総選挙 反TPPの核心 インタビュー オピニオン 京都大学教授 佐伯啓思さん』|朝日新聞1日

 過度な自由貿易は 資本の奪い合いに 国家間の対立招く
 
 戦後日本は、自由貿易体制のもとで豊かになった。そして、これからも―。そんなこれまでの「常識」は通用しないのか。環太平洋経済連携協定(TPP)=■=への参加をめぐって、総選挙で慎重論を掲げる政党が少なくない。でも、本当にうしろ向きでいいのですか?
 
 反TPP、反新自由主義の論客、佐伯啓思さんに論争を挑んだ。
 
■環太平洋経済連携協定(TPP)

 米国を中心にアジア太平洋の11カ国が参加する貿易交渉。関税の原則撤廃など高水準の自由化をめざす。野田政権は昨秋、交渉参加に向けた事前協議入りを宣言。ただ民主党内には反対論が強く、交渉参加は決めていない。参加すれば影響を受けると、農協や医師会などが強く反対している。
 
 京都大学教授 佐伯啓思さん
 
 49年生まれ。社会経済学、経済思想史。保守の立場から経済思想を論じている。「隠された思考」でサントリー学芸賞。近著に「経済学の犯罪」。
 

 ―なぜTPPに反対を。
 
 「ほぼ無条件の自由貿易に突き進もうとしており、非常に危険です」
 
 ―自由貿易が危険だと?
 
 「自由貿易が望ましい、という理論は経済学者リカードの国際貿易の比較優位説がもとになっています。二国間でお互いに生産品を特化して交易すれば、どちらも得をすると。そんな絵に描いたような図は現実にはない。製造業は国境を超えて技術移転し、得意分野が国外に移動することもある。むしろ各国は戦略的に比較優位を作り出そうとしている。いったん重要産業を手放したら技術はその国で育たない。農業をやめたら復活はできない。農業、工業、サービス業とバランスが大事。一つに特化するのはリスクが大きすぎます」
 
 ―そうならないようなルールを作る交渉をすればいいのでは。
 
 「僕は米国陰謀論者ではない。でも米国はTPPを戦略的に使おうとしているとは思います。日本が戦略性で優位にたてるとは思えません」
 
 ―かつての日米構造協議のような二国間交渉なら米国の圧力をまともに受けるでしょうが、TPPなら10カ国で米国と団体交渉ができる。その方がやりやすいでしょう?
 
 「日米FTA(自由貿易協定)の方がお互いの利益になる分だけましです。日本の農業、米国の自動車など重要産業だけを関税の撤廃の例外にもできる。無理なら決裂すればいい。原則すべて自由化のTPPは、そういう駆け引きがしにくい。TPP賛成論者は日本に利益があるというが、ルールが決まっていないのに利益を得られるとは限らない
 
 ―世界貿易機関(WTO)のルールができたのは20年も昔。しかも新ルールをめぐる交渉は、10年のマラソン交渉の末に破綻しました。TPPの試みは、空白の世界ルールを埋める土壌づくりではないですか。
 
 「WTOが150以上の国で合意するのが難しかったなら、先進国だけ、あるいは中国など新興国を含め20~30カ国で改めて決めればいい。それを補うために二国間のFTAもあるのですから」
 
 ―日本がTPP参加をにおわせただけで中国が刺激され、停滞していた日中韓FTA交渉まで動き出しました。日米がこうやって中国を何とかルールのある世界へ引き込もうとする。いいことではないですか。
 
 「中国が容易に国際ルールに乗るとは思えません。それに今のTPP賛成論には、『いずれ中国が入る』『対中国ブロックになる』という正反対の見方がありますよ
 
 ―どの自由貿易圏にも入らなければ、日本はグループづくりで孤立してしまいます。空洞化で国内の雇用機会をますます失います。
 
 「孤立はしません。現状だって孤立していないでしょう今の産業の空洞化は、むしろ円高と過度なグローバルコスト競争の結果です」
 
(※引用者:紙面に写真が2枚載っているが、そのキャプション)「技術革新にはもう期待をかけられない。ケータイやネットは社会秩序をずいぶん崩した」

 ■  ■
 
 閉鎖経済ではない 戦略的に内を向き 低成長でいこう

 ―コメが典型例ですが、国内市場に閉じこもってきた日本の農業は縮小し続けています。成長のない産業や市場は持続可能なのですか。
 
 「農政の失敗もあるが、一番の理由は日本人がコメを食べなくなったことです。日本の農業を米豪のように大規模農業で国際商品として成功させるのは難しい。世界は食料戦争の様相を呈してくるでしょうから、最も大事なのは自給率をあげ安定した供給を確保することです
 
 ―中国で日本の高いコメを買ってくれる富裕層が急増しています。貿易自由化を進めればコメも輸出できる。有望市場が隣にあるのになぜチャンスを生かさないのでしょう。
 
 「同時に中国から安価な食料品も入ってきます。時に粗悪なものも来るでしょう。いずれにしても中国市場への過度な依存は、逆に中国経済がクラッシュした時に大変な影響を受けてしまう。中国の将来は不安定で日中関係も波乱含みです。過度な中国依存はリスクが高すぎますよ」
 
 ―戦後の自由貿易体制は、各国の保護主義が世界大戦へと暗転した反省から生まれました。国家間の対立を緩和し、関係を深化させる「自由貿易の効能」をどう考えますか。
 
 「一般的に保護貿易が大恐慌をひどくしたと言われるが、それは正しくありません。むしろ19世紀から20世紀初頭には、過度な自由競争やグローバリズムによって資本の争奪戦が起きました。それが帝国主義につながり、やがて大戦を引き起こした。その方が危険なのです1930年代の大不況の直接の原因は保護主義ではなく、20年代の金融グローバル化のなかで生じたバブルです。それが崩壊して大恐慌になった
 
 「だから閉鎖経済をつくれと言いたいわけではない。今日の世界も金融の過度なグローバル化が進み、投機資本が国内経済を撹乱している状態で、自由貿易が双方の利益にならない。世界経済が底上げしている間はいいが、やがて条件は崩れる。資源の制約もある。中国、インドなど人口大国が高成長を続ければいずれ行き詰まる。その後に出てくるのは市場や資源をめぐる帝国主義、激しい国家間対立です。そうなる前にグローバル競争を抑えないと
 
 ―フランスの歴史学者エマニュエル・トッドが言うように「グローバル経済のレベルを落とせ」と。
 
 「そうです。世界全体が意図的に。ただ、一気にやるのは難しいから、少しずつもっていくしかない。自由貿易のイデオロギーにとらわれず、みんながもう少し『内向き』になった方がいい。欧州はそう考え始めたようにも見えます
 
 ■  ■
 
 ―どの国も内向きになったら、日本のエネルギー・食糧安保はもっと難しくなる。そのとき日本は内向きでいられますか。日本自身が帝国主義になってしまいかねないのでは。それが太平洋戦争ですよね。
 
 「そうです。この時代には日本もある程度軍事力や政治的な発言力が必要になる。外交力ももっと試される。ただ、資源獲得のために無理に海外進出する必要はない。日本経済を縮小しろとは言わないが、低成長でやっていく。成果第一主義をやめて、環境配慮型のライフスタイルに変える。そう腹をすえ、ほかの国とはちょっと違う、独自の国づくりをすればいいじゃないですか」
 
 ―日中関係が悪化しています。TPP陣営に入って中国の影響を受けずにルールを決める、という安全保障上の戦略は考えられませんか。
 
 「そういう意見はあるが、なぜ日米同盟ありきなのか。安全保障は、まず日本が独自に自らの国を、資源や国民財産を守る。これが原則です。それをやろうともせず、米国に守ってもらうために経済を委ねるというのは本末転倒です。TPPは経済的利益という別問題。そこを一体にするから話がややこしくなる」
 
 ■  ■

 ―経済学は今の停滞や危機に有効な処方箋を示せていません。脱成長モデルだって確立されていない。どうやって実現するのですか。
 
 「世界はこれから経済も政治も、そして外交も不確定性が高くなる。グローバル化のもとではこれが予測のつかない形で国内経済に影響し、雇用を不安定にする。できるだけリスクを避け、国内でお金が回る構造を生み出した方がいい。『内向き』というとそれだけでダメという俗な風潮がありますが、あえて戦略的に内向きになることが必要です」
 
 ―どのようにですか。
 
 「構造改革で弱体化した生活基盤や地方都市、コミュニティーの復興など国内でやることはいくらでもある。日本企業はできるだけ国内市場を開拓し、国内投資をする戦略を持てと言いたい。民間需要がない今のような時期は、政府が防災や将来の社会像をめざして公共投資を進めることも必要です。日本は国民が働きに働いてここまで来た成熟社会。さらに新興国と競争すれば、個々の労働者は大変な負担を強いられる。コスト競争から賃金が下がり、デフレが進むからです。これ以上、新自由主義的な競争システムでやるべきではない。競争主義や成果主義、金銭主義から少しずつ撤退すべきです」
 

【取材を終えて】

 いまだに誰も処方箋を示せない。それが今の経済危機の恐ろしさだ。この半世紀、私たちは歴史上、際立って高い経済成長を謳歌してきた。それが何かを狂わせているのかもしれない。佐伯さんの「スピードを落とせ」との主張には、とても共感する。だとしても「内向き」の先に本当の解があるとは、まだどうしても思えない。(編集委員・原真人)
 
(引用終)

(引用者)「論争を挑んだ」結果、佐伯啓思京大教授に一つひとつTPP推進論を完膚なきまでに叩きのめされた編集委員。それはともかく、なぜこのインタビュー記事を12月1日という総選挙公示日(4日)の直前に載せたのか。

 朝日新聞だけでなく商業メディア、とりわけ全国紙は日本農業新聞を除いてTPPに関しては「一糸も乱れない」推進で一致している。したがって、反対派の意見を正当には扱わない
 
 ここでは、その意図を【取材を終えて】の部分に持ってきている。「佐伯さんの「スピードを落とせ」との主張には、とても共感する。」の部分だ。本文の「論争」の部分では、佐伯教授は「そうなる前にグローバル競争を抑えないと」と言っているのをスリカエている。グローバル競争じたいは悪いことではなく、そのスピードが問題なのだ、と読者に思わせたいのだ。だからつづく【取材を終えて】の部分は「だとしても「内向き」の先に本当の解があるとは、まだどうしても思えない。」と結んでいる。
 
 要するにTPP反対論者の論を「内向き」(=悪)とレッテル貼りし、自分たちのTPP推進論者は「外向き・国際化」(=善、ただしスピードを緩めればいいだけだ)と印象付けようとしているのだ。
 
 飽くなき資本の欲求の暴走がTPPのような最終形態の一つを生み出している。スピードの速い遅いではない。統制できない資本こそが問題で処方箋は既に出ている。この編集委員が依拠している新古典派経済学(=新自由主義)には処方箋がないだけだ

  1. 2012/12/09(日) 19:18:52|
  2. TPP
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